ダロウェイ婦人

久しぶりに「小説」を読んだ気にさせられた。19世紀末ロンドンで保守的な政治家の妻ダロウェイ婦人がいつものように人を集めてパーティを開く一日を描いている。話の大筋はこれだけなのだが、地の文の記述と複数の登場人物の独白の記述が切れ目なくとんでいき、ときどき「あれ、今誰視点?」と迷子になる。ので、はじめは、非常に取っ付きにくい。が、そのうちこの多重視点に身を任せるように読めるようになって、多数の糸-意識-に絡み取られながら、人生とは? 幸福とは?なんてことを考えさせられる。こんな手法で、「読ませる」小説に仕上げている手腕に感服。

ダロウェイ夫人 (集英社文庫)

ダロウェイ夫人 (集英社文庫)